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私のセカンドチャンス――学んだことを再就職に生かして

C・M(40代)

 私は、1990年6月まで外資系企業に勤務していた。責任ある仕事を任され、人間関係も良好、恵まれた処遇を得て、やりがいを感じていた。1989年11月に結婚し、夫とは家事を対等にシェアして、共働きを続けてもいた。しかし、「何かが違う、これは私のやりたい仕事とは本当は違う」、そう感じていた。結局出産前に退職し、1991年、専業主婦のまま、長女を出産する。その時は、出産してから自分がやりたい仕事を見つけて、再就職すればいい、そう思っていた。
 仕事を手放していたことを後悔するまでに、出産後3ヶ月とかからなかった。
 そうだ。私は、自分に合っている仕事をしたいと思っていたが、「仕事をしている」自分が本当の自分らしい自分であることに、ようやく気づいたのだ。
 それから暗中模索が続いた。長女が2歳のとき、夫の転勤について行き、地方都市で2年間過ごした。その間に次女を出産し、再就職へと具体的に動けなかった。
 1995年に東京に戻ったが、いざ再就職となると、子どもをもった後の再就職が難しいことを、色々な局面で感じることになる。
 はじめは「保育園に子どもを預ける」ことに少々抵抗感があったが、どうしても仕事したいという思いが強く、抵抗感を乗り越えることができた。最初の大きなハードルは、子どもを保育園に入園させることだった。自分が求職中や非正規で働いていると、子どもを保育園に入園させることが難しいことを初めて知った。次女はいわゆる待機児童となり、民間の託児所を2カ所、計1年5ケ月経験して、ようやく認可保育園に入れた。
 私の就職も多難だった。子どもが小さいことで、面接時いくつもの企業から難色を示され、なかなか採用されなかった。結局最初の1年間は在宅の仕事につき、その後パートタイマーや派遣社員として働いた。小さな会社で、社長のワンマンに悩まされたこともあった。そんな中、子どもを保育園、学童保育所に預けて働くことにもう迷いはなかったが、正社員と同じ仕事をしていても、処遇が悪いことに納得が行かなかった。私は、このまま派遣社員やパートタイマーとして終わるのだろうか?
 フリーライターとして物を書きながら、ある社会学者の本に出会った。自分はなぜ家事と育児だけでは満足できないのか?子どもをもっても働き続ける女性に我が身を比べて感じる、この剥奪感は何なのか?その答がその本にあったのだ。これだ!私は次第に社会学にのめりこんで行った。働きながら週に1~2回、科目等履修生として、大学で講義を聴き始めた。自分で学費を払い、家事や育児、仕事をやり繰りしながら、大学に通った。
 10代、20代の頃にはつまらなかった大学の講義が、どれも興味深かった。先生の言葉の一つ一つが、机上の空論ではなく、社会人、主婦としての経験に引き寄せると、ありありと実体をともなって私の前に現れるのだった。もっと深く学びたい、私はそう思うようになっていた。仕事で自分を発揮できないなら、この2年間は自分のために大学院に通いたい、そう考えて受験勉強に打ち込んだ。
 2001年4月。41歳の春、私は大学院の門をくぐった。長女は小学校4年生、次女は1年生になっていた。東京学芸大学の修士課程で社会学を専攻し、ゼミの勉強や自分の修士論文に入学当初から取り組み始めた。もともと問題意識をもち、それを解決したくて入った大学院。寝る時間を削って家事・育児・仕事と勉学を両立させた2年間は、とても充実していた。修士論文のテーマは「子育て期の夫婦の家事・育児分担と妻の感情・意識」であった。
 卒業後の就職を考えたとき、最初は大学院で学んだ知識を生かせるとは夢にも思っていなかった。ところが、所属していた「保育園を考える親の会」の活動で、ある男女共同参画センターを訪れたとき、偶然職員を募集しているのを見つけ、応募し、採用されたのである。この3月で、男女共同参画センターで働いて来て5年になる。
 男女共同参画センターも中途採用は非常勤職しかなく、責任が重いわりに待遇が悪い。雇い止めと言って、同じセンターには3年まであるいは5年までしか勤務を継続できないというおかしな規定もある。しかし、社会学を大学院で学んだことが生かせる職であり、自分がぶつかってきた壁、男女平等を阻害する要因に対して、さまざまな取り組みを行える職場ということで、非常にやりがいを感じている。私のライフワークとして、男女平等を普及させるために、できるだけ、この分野で働いて行けたらと考えている。
 最後に、専業主婦の時代から、夫とは二人で育児も家事もほとんど対等に分担して助け合ってきたことをつけ加えたい。実生活でも仕事でも男女平等を目指している私である。
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