RIWAC・DA(リワック・データ・アーカイブ)女性のセカンドチャンス経験事例検索結果一覧 > 司書仲間とつくったNPO法人が図書館業務を委託されて

司書仲間とつくったNPO法人が図書館業務を委託されて

吉居 信子(40代)

 私は現在NPO法人で働いています。職場は昨秋、民間委託になったばかりの公立図書館です。
 
 私は子どもの頃から、本を読むことが好きでした。小学生の頃は図書委員をしたり、図書室の先生にかわいがっていただいた思い出があります。高校生のときに進路を決めるときは、漠然と図書館の仕事ができたら素敵だな。本屋さんもいいな。などと考えていました。
 当時、司書を養成する図書館短大という学校があり、自分の高校から進学された先輩もいらっしゃるようでした。しかし、皮肉なことに、私が入学できるはずの年から4年制大学にかわり、共通一次試験を受けなくてはならなくなりました。国語や歴史は大好きでしたが、理数系の科目は先生のおっしゃることが日本語に聞こえないありさまだった私は、あっさりとあきらめ、短大の国文科に進学しました。図書館司書の資格だけはとりましたが、食品メーカーに就職し、一般事務をしていました。
 5年ほどOL生活をし、結婚をしました。新居が職場から遠く、当時は寿退社が暗黙の了解という雰囲気でしたので、何のためらいもなく退職しました。
立て続けに子どもが3人生まれ、地方への転勤などもあり、専業主婦に徹していました。母や祖父母が家にいるのが当然で、鍵などあけたことがない環境で育った私には、幼い子どもたちを預けて働くということは考えもつかなかったのです。
 それでも、末子が幼稚園にあがると7年ぶりに自分ひとりの時間がもてたことがうれしく、何かやりたいなという気になりました。いずれパートに出るときに役に立つかなと考え、医療事務の講座に通い、資格をとったのもこの頃でした。幼稚園の役員をしたり、子どもを習い事に送ったり、ママさんバレーに励んだり・・・それなりに忙しく楽しい日々でした。ある日、近くのパン屋でパート募集のポスターを見つけ、午前中の子どもが幼稚園に行っている間だけ時給600円で働くことにしました。わずかではありましたが、自分でお金を得られたことがとてもうれしかったです。また、接客の仕事は面白いなと思いました。
 パン屋さん夫婦には良くしていただきましたが、夫の転勤のため4年ぶりに神奈川に戻ることになり、仕事はやめなくてはならなくなりました。
 このとき、私は37歳でした。子どもは小学校の5年生・3年生・1年生。ちょうど、夏休みでしたので、9月から働きたいなと思いました。しかし、求人広告をみても、35歳以上になると本当に限られた職種しかありませんでした。
 本を読むことが好きだった私は、子どもたちにもよく絵本を読みきかせたり、図書館に連れて行ったりしていました。家から数分のところに、分館でしたが、小さな図書館があったのです。とある暑い日にのどが渇いたという子どもに付き合い、冷水機を目当てにその図書館に行ったときに、「非常勤職員募集」の貼紙を見つけたのでした。なにやら、運命的なものさえ感じ、さっそく履歴書を書いて届けました。採用が決まり、水曜日と土日のどちらかという条件で働くことができるようになりました。たった週に2日ほどでしたが、楽しくて仕方がありませんでした。それとともに20年も前に取得した資格より、現場に立ち、利用者に鍛えられることがスキルをのばすことなのだと痛感しました。
 3年半ほどたった頃、体制の変化により、図書館司書の資格のある人の募集があり、フルタイムで働くことができるようになったのです。仕事の幅も広がり、本を選書したり、書架作りをしたりとてもやりがいを感じました。蔵書数が4万冊程度の小さな図書館でも、利用者が限られていても、少しも飽きることがありませんでした。ところが、その制度には最長で5年という区切りがありました。司書という職業柄、経験や蓄積は非常に大切なものなのに・・・と複雑な気持ちでした。
 やはり皆、同じ思いをしていたのか、市内に4館ある図書館で働く同じ立場のメンバーが集まり、連携を持つようになりました。時勢もあり図書館の民間委託の話もちらほら聞こえ出した頃でした。幾度も話し合いを重ね、「図書館利用の普及活動」「読書推進に関する事業」「図書館運営に関する事業」をするためにNPO法人を立ち上げました。20代から40代まで、女性だけ12人の仲間です。それから1年半ほどは、通常の勤務後や休日に打合せをしたり、催しを開いたりしました。特に図書館の民間委託を受託するための企画書を出す際には、睡眠不足の日々が続きました。そんな努力が実り、私たちのNPO法人は図書館業務を受託することができました。
 図書館を受託したことにより、図書館司書の他にも、組織を潤滑に運営していくための経費のやりくりや勤務のシフトを考えるという仕事も加わりました。課題は次々とありますが、利用者から、図書館がきれいになった、本を選びやすくなった、と言われることも多くなり、非常に励みになっております。
 
 せっかく手にした「セカンドチャンス」を無くさないよう、初心を忘れず、家族や仲間たちに感謝の気持ちをもち、誠実に仕事に取り組んで行きたいと思います。
RIWAC・DA(リワック・データ・アーカイブ)女性のセカンドチャンス経験事例検索結果一覧 > 司書仲間とつくったNPO法人が図書館業務を委託されて