私のセカンド・チャンス

市原 由美子(40代)

 求めよ、さらば与えられん・・・、とばかりに好奇心旺盛な私の再起は子育てを機に始まった。現在はまだ道半ば、セカンドチャンスを得たとは言いがたいが目標に向かってingである。
 私にとって、専業主婦になったことは生活者の視点で社会を見直すいい機会となった。
 さらに、これまで継続してきた、社会活動に参加し人権や福祉について多くの問題提起を受けたことが契機となり、浮遊物のような自分自身の存在と無知の知を覚醒するにいたった。
 この年になって・・何もしらないことに羞恥心と焦燥感に苛まれることもしばしば、何とかしたいと募る気持ちは再度学ぶことにつながり、女性学との出会いをはじめ夜間の女子大生ならぬおばさん学生の誕生となった。
 社会科学といわれる大学での学びはとても楽しく、これまでの体験を理論化するいい手段となった。また福祉のあり方に疑問をもっていた当時、「福祉は全人権の復権である」といわれた時には、目からうろこ、制度がなくても深刻な状況におかれている人のために「自分でできることから」との確固たる思いが強くなり、卒業後7年を経てこれまでの集大成とばかりに現在の福祉事業の立ち上げとNPO法人の取得へとつながった。
 それぞれの事業の目指すものは『安寧』の実現。小さな団体のとてつもない大きな願いである、その真意は物心両面が整って初めて穏やかに安心して暮らすことが可能になる。そのためには精神的な充足感を同時に得られるような支援こそ必要であり、子どもと高齢者を主体として、親あるいは家族のバランスを維持できるための手がかりを併せ持った事業内容を考案した。
 事業の指針は、家族支援・ファミリーケアである。最近の子どもたちの起こす凶悪な犯罪や家庭を温床として再生産される暴力の連鎖などを垣間見て、閉鎖的な家族の中に客観的な介入があれば親子の緊張や、暴力などの連鎖を少しでも防ぐことに有効な手立てになるのではないかと推察できるからである。
 双方の事業指針は以上のように共通しているが、具体的な事業は以下の通りである。
 ライフサポートとしての福祉事業については、単身高齢者なども含めた、離れ離れに住む家族を対象とした安否確認及び家事や食品の買出しなど日常生活に必要なサービスを提供するものである。
 また、NPO法人子育て応援団・みるくらぶとしての事業の具体的な取り組みは、子育て中の親と子どもを対象にしたコミュニケーション活動をはじめ、子育てスキルの獲得と意識啓発のための学びの場の企画、運営である。また、子育て支援として電話などによる相談援助と「アクティングケア」として①家事育児の代行支援と②母親の就労代行の二つを掲げている。①の家事、育児の代行支援は突発的な事態に対応するための援助活動である。勿論母親が病気や体調などが優れないときのことも想定して行っている。
 ②の母親の就労代行という新たな取り組みは、現在ある公的な支援の病後時保育とは全く逆の発想で、子どもの病中、病後は母親がケアできることを想定して、母親の代わりに職場に出向き仕事を行う支援である。安寧を謳っているのもこのことと関連するが、親子双方にとって安心を実現するに有効な支援だと考えるからである。これからも実現に向けて様々な機会をぬって提言していきたいと考えている、課題が多いことも承知のうえだ。しかし、退職した女性や同じ技術を持つ人材などをうまく活用すればできないことはないと考えている。
 以上のような事業を展開している、一部はまだまだ道半ばの状態では在るが、課題を探りながら今後も仲間とカンカンガクガク議論を交わしながら充実させていきたいと思っている。
 このようにセカンドチャンスの渦中ではあるが、ここに至ったのは『信念』の一語に尽きる。常に問題意識を持ち、進むか進まないか自問自答を繰り返しながら自身をライバルとして自己研鑽に努めてきた。しかしその根底を支えてきたのは、家族であり、先輩ママたちを始めとする出会いと仲間の力強い支えがあってこそ。
 そして何より、今日より明日、明日より明後日と常に進化していたい、その気持ちこそが必要な条件なのかも知れない・・・。地位も名誉もない、極々普通のおばさんの存在を知らしめることも他の方のやる気や活力源になれば、それも私のチャレンジの一つとの思いで応募させていただきました。