ボランティアを選択してみませんか

M・S(50代)

 ごく普通の主婦の経験が「女性のセカンドチャンス」というテーマには合わないのかもしれませんが、家族の居場所を守り、社会とのつながりも保ち、自分を高めることも出来るボランティアもひとつの選択肢にして頂きたいと思い応募しました。
 点訳に出会ったのは子供が2歳の時でした。家事と育児に専念していた頃でしたが、ある日、すごい勢いで子供を叱っている自分に気付き、このままでは子供をつぶしてしまう、自分の目を子供以外の世界にも向けた方がいいと思いました。そんな時、市の広報で点訳ボランティア養成講習会のお知らせを見つけたのです。33歳で出産するまでは婦人服のサンプルを作る仕事をしていたので、同じ頃から仕事を送ってもらい家で作る事も始めました。両方をこなすのは無理があったのですが、地元の点訳サークルに入り週一回の例会に出ていると社会とつながっているような気がしたのです。
 点訳を続けていて良かったことは点訳者の勉強会や指導員養成講習会などに積極的に参加して、いろいろな場所へ出かけ、人と出会い、社会の問題にも目を向けるようになり視野が広がって行ったことです。また、視覚障害を克服して自立している方たちやボランィアからは相手の人格を尊重した言動に接することが多く、思いやりの足りない未熟な自分を成長させるのに役立ってきました。
 もうひとつ点訳者のメリットとして、いろいろな分野の書物を読むことがあげられます。自分からは決して興味をしめさない本や教科書や参考書なども、点訳すれば読むことになり知識が広がって行きます。これもまた、いろいろな人の考えを知ることになり、他人を理解するために役立っていますし生きていく知恵も学びます。
 今は名古屋市の福祉法人の点訳ボランティアとして活動していますが、50歳になってやっと点訳者として間に合うようになったとおもいます。仕事はやめ、子供も手を離れ、点訳に多くの時間を向けることが出来るようになり、経験や知識も蓄積されてきたからです。
 世間では毎年多くの出版物が出されますが、点訳されるのは1割にも満たないと言われます。視覚障害の方が読みたくてリクエストした本をより速く正確に点訳することが求められています。
 現在点訳者養成講習会のサポートをしていますが、受講者は子育て中の30歳代から、子供が独立した50・60歳代までいらっしゃいます。これから経験を積んで行くとなると若ければ若い方の方がいい筈です。
 点訳は今まで多くの専業主婦がかかわってきましたが、ボランティアの高齢化が問題になってきました。専業主婦が少なくなってきて後継者不足です。社会人として成功するのも良いですが、地道に社会のために活動する人も必要だと思います。誰かが点訳しなければ点訳本はできないのですから。